Entries from 2010-09-01 to 1 month

『食わず嫌いのためのバレエ入門』/守山実花

昨今バレエが女性のエクササイズとして注目されている。熊川哲也が主宰するKバレエカンパニーでも大人の初心者コースが開設されており、仕事終りのOL達などで平日の夜はごった返している。 バレエダンサーを見てわかるとおり、彼女らの肢体はとても美しい…

『花伽藍』より『偽アマント』/中山可穂

些細な諍いが原因で別れることになったかおりと仁子。かおりが帰宅すると、部屋からは仁子の荷物はなくなっており、おまけに愛猫のアマントまで消えていた。かおりは悲しみに打ちひしがれながら、仁子との思い出を一人回想する。 会社員のかおりと社員食堂で…

『悪の教典(上・下)』/貴志祐介

貴志祐介の最新作。主人公でサイコパス(精神病質)の蓮実聖司の恐ろしい犯行を描いている。蓮実はハーバード大卒、アメリカの大手投資銀行に勤めていたという華々しい経歴を持ち、現在都内の高校で英語教師をしている。学内で起きる問題も速やかに解決し、…

『スタンドアップ〜North Country』

2005年に公開された1988年に起きた実際の炭鉱での男性職員によるセクシュアルハラスメント訴訟を元にした映画。 シャーリーズ・セロン演じるジョージーはDVの夫から逃げるようにして子供2人を連れて実家に帰ってくる。実家近くの美容院に勤めるよ…

『スリーパーズ』

この作品をWOWOWでたまたま見かけた時、思わず見入ってしまった。少年院で少年達が看守に性的虐待を受けるシーンが見ていられないほど酷かったからだ。 1960年代のNYはマンハッタンの西側「ヘルズキッチン」と呼ばれるスラム地区に住む仲良し4人…

『夏子の冒険』/三島由紀夫

本書の主人公夏子はわがままお嬢さんだ。裕福な家庭の一人娘として生まれ、自分の思い通りにいかなかったことなどこれまでに一つも無い。家族が夏子に反対すれば、すぐに家出をし最後には家族全員が渋々夏子の言うことを聞いてしまう。だが、単なるお馬鹿な…

『飼育する男』/大石圭

角川ホラー文庫で貴志祐介さん以外の作品を読むのは今回が初めてであった。貴志祐介さんの作品が専門知識を駆使して書かれているのとは対照的に、大石圭さんの作品は大石さんの頭の中に浮かんだ残酷な映像をそのまま文章にしたという印象を受けた。あとがき…

『放課後の音符』/山田詠美

この本を読んだ当時、私は高校1年生でちょうど主人公と歳が近かったこともあって、主人公にすごく入れ込んでしまったことを覚えている。主人公は7人の友人や先輩を通して、恋愛について考えを深めていく。この本の中で主人公の名前は意図してなのかなぜか…

『心の処方箋』/河合隼雄

本作は2007年にお亡くなりになられた河合隼雄氏の名著である。1992年に刊行され、多くの人から読まれてきた。わたしがこの本を手に取ったきっかけは、中学時代に通っていた塾の経営者の勧めである。塾長は河合隼雄のファンらしく、他にも数多く河合…

『土偶』/松本清張

些細な出来事がその人の人生を大きく狂わすことがある。『死の枝』には十一の短編小説が収録されており、いずれも思いもよらない出来事が主人公の人生を大きく変えている。その中でも最も端的に主人公の人生の転落模様を描いていたのが最後の物語である『土…

『不祥事』/池井戸潤

銀行と聞くと、依然として男性社会のイメージがある。最近になってようやく日本銀行で女性初の支店長が出たが、このニュースからも、銀行で女性従業員が総合職として男性並みに働くことはいまだに難しいことがわかる。本作に登場する一般職の女子行員の台詞…

『幸せになりたい』/乃南アサ

本作には7つの結婚にまつわる短編が収録されている。それぞれのストーリーの主人公である男女が結婚前後に思い悩むさまが鋭く描かれている。 「結婚=幸せ」と誰もが考えるだろうが、はたして本当にそうだろうか。読み終えた後にそう思った。人によっては独…

『新世界より(上・下)』/貴志祐介

本作は貴志祐介のこれまでの作品の中でも最もSF色の強い作品である。 作品の舞台は1000年後の日本。現在と変わって人口は大幅に減り、社会は人間とその奴隷であるバケネズミという言語を操る体長1.4メートルものネズミで構成されている。現在と最も…